終活とは人生をより良く生きる作法

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相続に関する規定の大幅改正で利用しやすくなった自筆証書遺言

「自筆証書遺言」の緩和措置が、2019年1月13日から施行されます

2018年7月に民法の相続に関する規定(相続法)が大幅に改正されたことを知っていますか?改正点は以下のとおりです。施行日は違いますが、2年以内に段階的に施行されて行くことが決まっています。

・配偶者居住権の創設

・自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能となる

・法務局で自筆証書による遺言書が保管可能となる

・被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能となる

このうち、遺言に関する改正として、自筆証書遺言の一部をパソコンで作成することが可能となり、2019年1月13日から施行されます。これにより自筆証書遺言が利用しやすくなります。 

また、遺言書を保管するための「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」が新設され、こちらは2019年1月13日から施行されます。

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遺言書の最大の目的は、財産の相続人や分配を明確にすることです。遺産相続といっても収入ばかりであればよいのですが、負債(借金など)がある場合はそれらを引き継ぐ場合もあります。また、遺産の額に応じて相続税がかかります。遺言書の内容次第では遺族同士のトラブルに発展するケースも多々あります。 「自分には大した財産はないから大丈夫」などと考えず、トラブルを事前に防ぐためにも、遺産相続についての希望を詳細にしておくことが重要です。 遺言書は法律上「死後の意思表示」という扱いです。残された遺族が争ったりしないように準備しておくのも終活の重要なものの一つと考えて準備しましょう。

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利用しやすくなる自筆証書遺言

遺言を残す場合、一般に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つが利用されています。

「公正証書遺言」は、遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がその内容を書き取って遺言書を作成するもの。公証人は公の権力を根拠に証明や認証ができる法律の専門家なので、遺言書の安全・確実・真正という点で優れています。遺言書の原本が公証役場に保管されるので紛失の心配がなく、公証人が作成することで形式面での不備もなく安心できることがメリットです。一方、作成には手数料がかかり、その際に証人2人の立ち会いが必要になること、時間がかかることなどがデメリットといえるでしょう。

「自費証書遺言」は自分で作成して押印すればよいので、誰にも知らせることなくいつでも作成できて、費用もほとんどかからない点がメリットです。

しかし、遺言書の内容が要件を満たしていなければならないなど厳格な様式が求められるため(要件を満たしていない場合は無効となる)、一般の人が実際に作成するとなるとかなりハードルが高く、躊躇してしまうことも少なくありませんでした。 

自筆証書遺言も一部パソコンで作成可能に

自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑さえあれば誰でもすぐに作成できるメリットがありますが、全文・日付・氏名を自筆で書くことが求められます。そのため財産の種類が多い場合は手間と時間がかかります。また、万一、書き方や内容に不備があった場合は、遺言そのものが無効になったり、遺言した人の意思どおりにならなかったりすることもあります。
このため、自筆証書遺言を考えていても実際に作成しないまま亡くなってしまい、後々相続争いになることがあります。
 
今回の改正相続法では、これらの負担を軽減するため、遺言書に添付する相続財産の目録については、パソコンで作成した目録に銀行通帳のコピー、不動産の登記事項証明書等など、自書によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになります。

つまり、「誰にどの遺産を分割する」という遺言書の本文は自筆で書かなければならないことは変わりないのですが、相続財産目録については証明書類の添付は必要ですが、パソコンで作成することができるようになったのです。
 
これにより、遺言書を書いてから、預貯金や不動産などの財産の具体的な内容が変わることがあっても、財産の目録をパソコンで作成していれば変更にも対応しやすくなりました。(財産目録にも遺言した人の署名・押印は必要です)
 
ただし、目録には1枚ずつ(両面の場合は両面とも)遺言した人の署名・押印が必要となります。目録の部分は自筆でなくてもよいので、不安な方は間違いがないように弁護士や行政書士などの専門家に作成を依頼することもできます。
 
この自筆証書遺言の方式の緩和は、2019年1月13日から施行されます。しかし、遺言を作成した人が施行日後に亡くなったとしても、自筆証書遺言が施行日より前に作成されている場合は施行前の方式が適用されます。そのような場合、すべて自筆でなければならないので注意して下さい。 

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引用:政府広報オンライン

案外保管場所に悩む自筆証書遺言

自筆証書遺言は、せっかく書いてもどこに保管したらよいか頭を悩ませる方も少なくないでしょう。弁護士や税理士などに預けたり、金融機関の貸金庫で保管したりする人もいますが、あまり秘密にしておきたいからと誰にもわからない場所に保管しておくと、いざというときに遺族が見つけられずに、せっかくの遺言した意思が伝わらなくなってしまう可能性もあります。

反対に、見つかりやすい場所に保管しておくと、自分に不利な遺言をされた相続人に隠されたり、捨てられたり、書き換えられたりする可能性もあります。また、遺言をした後に紛失してしまったり、認知症になって忘れてしまったりするリスクもあります。

そこで、こうした問題によって相続をめぐる紛争が生じることを防止し、自筆証書遺言をより利用しやすくするために、法務局で自筆証書遺言書を保管する制度「遺言書保管法」が創設されます。

自筆証書遺言は法務局での保管が便利

遺言書保管法ができたことによって、この遺言書の保管場所の悩みが解決できるようになります。この遺言書保管法は2020年7月10日から施行されることになっています。(自筆証書遺言の方式の緩和とは同時施行ではありません。)

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引用:政府広報オンライン
 
遺言書の保管は、遺言した人が法務局に出頭して保管の申請をすることが必要です。その際に、遺言書のほか、本人確認書類など所定の書類が必要となります。提出された遺言書について、法務局で法律上の形式が整っているかの確認を行いますので、遺言書の形式上の不備を防ぐことができ、自筆証書遺言のデメリットである「法的要件を満たさず無効」となる恐れがなくなります。

法務局では、提出された遺言書に不備がなければ原本を保管し電子データで管理します。法務局で保管された遺言書は、遺言した本人が訂正したい場合や破棄したい場合は取り戻すことが可能です。また、遺言書を訂正したり作成し直した場合は、遺言書を再度保管申請することも可能です。
 
遺言した人が亡くなった場合は、相続人等の関係者が法務局で遺言書の有無や遺言の画像データの確認などをすることができます。

また、相続人等の誰かが遺言書を閲覧したり、電子データで保管している情報を証明した書面の交付を受けたりすると、法務局から他の相続人等に遺言書を保管していることが通知されます。
 
なお、従来は自筆証書遺言は家庭裁判所で検認を受ける必要がありましたが、法務局で保管されている遺言書についてはこの検認手続きが不要になります。詳細は施行令等で決められる模様ですが、保管費用も数千円程度で済むといわれていています。
 
遺言に関する法改正や遺言書保管法の創設によって、これまで厳格さが求められていた遺言書に関する規制が緩和され、利用しやすくなります。終活でも遺産相続は大事な項目です。

遺言書とは遺産相続を円滑にするためのものです。いつ、病気などで「遺言能力がない」状況になるかわかりません。そのために、気になったら意志能力がしっかりしているうちに、遺言書を作成しておくことが大事です。遺言は何度でも書き直すことができます。この機会に、相続に向けて遺言書の作成を検討してみることをお勧めします。

  

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